ステロイドを断って2ヵ月が経過。強い炎症が全身を覆い、眉毛は抜け落ち、顔中に滲出液が貼りついている。体力も底をついて、起きているのがやっとだった。

「情報が溢れてますから、何が正しいかを見極める目が本当に必要ですよね」
そう言って、にがい表情を見せるのは大瀧薫代さん。慎吾くんのお母さんです。言葉に力が入るのは、実際に、氾濫する情報に飲み込まれた手痛い経験があるから。
「最初に図書館で借りてきたのがステロイド訴訟の本だったんです。それを読んで、絶対にステロイドはダメだと思いましたし、漢方なら大丈夫だと信じ切ってました」

静岡県清水市にお住まいの大瀧さんご一家は、両親と姉弟の4人家族。慎吾くんにアトピーが出現したのは小学3年生の秋です。
「その年の初めに家を新築しましたし、炎天下の練習が続いた後でしたから、化学物質や紫外線が引き金になったのかもしれませんけどね」

振り返って原因に思いをめぐらすのは父親の大瀧麻佐行さん。市役所に勤めながら少年ラグビーのコーチをする麻佐行さんの影響で、慎吾くんは1年生のときから地域のスポーツ少年団に参加。ラグビーやサッカーで汗を流す健康優良児にとって、アトピーやアレルギーは、知らない世界の出来事でした。

しかし、腕から始まった炎症は、春が来ても居座ったまま。塩マッサージや入浴剤、お茶風呂など、アトピーに効果があると聞いたさまざまな方法も手応えはありません。薫代さんの友人から朗報(?)が入ったのはその頃です。

秘伝の漢方の正体は
ステロイドだった


「漢方で治った人がいるって聞いて、千葉にある漢方薬局まで連れて行きました。薬がなくなると送っていただくんですけど、保険が利かないので毎月5〜6万はかかりましたね。全身に塗りますから、すぐ終わっちゃうんです」

薫代さんは朝晩ていねいに薬を塗り、慎吾くんもにがい薬を飲み続けました。その甲斐あってアトピーは順調に消退。しかし、薫代さんの中に引っかかるものがありました。こんなに良く効くなんて、何が入ってるんだろう?

ふと浮かんだ疑問を問い合わせると――
「はっきり答えてくれないんです。秘伝だから中味は教えられないということで、何となく不安だなと思ったんですけどね」

小4の冬。たまたま注文が間に合わず、何日か薬が途切れたことがありました。すると、数日のうちに状態が一変。皮膚はみるみる黒ずんで硬くなり、表面がバリバリにひび割れ、猛烈なかゆみが襲ってきたのです。薬が切れると一気に噴き出してくる症状。まるでステロイドのリバウンドです。
「他人事を装って近くの薬局で相談したら、『それは確実にステロイドが入ってます。入っていないわけがない』って。もうくやしくて、漢方薬局に電話しました」

薫代さんの勢いに押されたのか、今度は秘伝の内容を白状。顔用と体用、1年間塗り続けてきた2種類の軟膏は、どちらもステロイドの混合薬だったのです。

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