炎症が顕著だった首にはうっすら色素沈着が残る。背中も色が残り、少しまだら。もうアトピーではない。


徐々に治っていく実感
あれっ、今まで何時間
掻かなかったかな

 
 2カ月を越えると、ジュクジュクだった炎症が乾きだし、巾の狭い皺の集団が、皮膚を斜めに横断しながら走るようになりました。かゆみは相変わらずきついものの、汁がそう出なくなっています。シャツの下に着ていたバスタオルのベストが必要なくなり、鏡を見るのが嬉しいほどに、明らかに炎症が減って、自分の顔に戻っています。しかし、まだ睡眠が思うようにはとれていませんでした。
「その頃、いつも遊びにきてくれていた友人が、『夜中、どうせ寝れんのやったら、店にうどん食べに来いや』って誘い出してくれて、夜だけですが、もう出歩くようになっていました」

 アトピーの症状には一切触れずにいた友達ですが、しっかり遠藤さんの回復を見極めていらしたのでしょう。良くなってきた頃にこうして誘い出してくれたのですから。
「毎日4時間の湯治の賜物としか言いようがありませんが、あれほどの重症が、始めて2カ月でグンと良くなりましたね」(宮治カウンセラー)

「ええ。はじめどうしていいか分からなかったときは、結構電話でいろいろ聞いていましたけれど、自分の中でも心配がなくなると、ただ黙々と風呂に入っていたという感じで」。遠藤さんがカウンセラーにアドバイスを求めたのは、丘疹が増え、赤く膿み出した頃、それが感染症によるものかどうかの見極めを、素人判断しないためでした。電話で安心が得られた後は、
「完治するときは絶対にやってくる。自分の場合、その瞬間を待つのではなく、向かって行く気でしたから、ひたすら入ったんです」と、また湯治に打ち込めば良かったのでした。

 3カ月、4カ月経つと、大きな炎症は消え、細かな湿疹が寄り集まって、色素沈着に移行しつつありました。会長から初めに言われた4カ月間をクリア。これが大きな自信につながっていきました。
「平成7年の年末、友人が『家でジーッとしているだけではアカン。息抜きに遊びに行くつもりで』と紹介してくれて、短期のアルバイトに行ってみました。まだ夜が眠れていなかったので、夜間です。人と接すること、体を動かすことに喜びすら感じて、症状が落ち込むことも幸いありませんでした」

 そして、もう一つ嬉しいことが。『あれっ、この何時間、掻いていないんじゃないかな?』と、気づく機会が増えていたのです。ステロイドを使って消すかゆみと違い、自然に、時間をかけて治す皮膚の炎症。パタッとかゆみが消えてなくなるというよりは、かゆい・かゆくないの境は分からないものの、後で嬉しさがこみ上げる感覚だったそうです。
「かゆみさえ取れたらこっちのものかなと思いましたね。色素沈着ぐらい残っていようが、日焼けしたら分からないものになるだろうし。見た目より、あの強烈なかゆみが消えたことで、地獄から天国でしたよ」

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