温泉を始めて最初の離脱。この後 1カ月かけてピークに。細かいザラザラプツプツした湿疹が引っついて広がった頬にはむくみが。膝裏にも湿疹の集団。

その顔、どうしはったん?
どんな子育てしてはるの?


 病院で状態の悪化を訴えても、「なら別の薬を」という話にしかなりません。『方法は薬だけか』。生後1カ月から種類を替え、3カ月間頼ってきた"薬"
という手段に見切りをつけようと、明子さんは決心しました。
 しばらくして、『おしえて! アトピー』(スコラ社刊/小川秀夫監修)のCMを、明子さんはテレビで、郁男さんは新聞で見つける日がやってきました。「今日なぁ、こんな本の……」、二人が同時に話題にしたのは、まったく同じ本のこと。マンガの気安さも手伝って貪るように読み進むパパとママ。これでいいんだと薬を塗ってきたことが「ダメだったんだ」に一転。ページを追うごとに増大するショックは、本の中にあった「副作用の一つは成長障害」の文字に目が止まったとき、ピークに達しました。
「こっち(明子さん)が相当参ってしまったんですよ。本に出てたオムバスって所に一度電話して気の済むように相談したらって」(郁男さん)
「指示通りに薬を塗って、私の食べているものも制限して、お医者さんに言われたことすべてが間違いやったなんて、どうしたらいいんでしょうねぇって。相談というより、気持ちを訴えて楽になりたかったというのかな。なんとか自力で治してやりたいと言ったとき、『お母さんの考え方は正しいと思います』って肯定してもらえて嬉しかったです。無理に湯治しなくても、毎日のお風呂で解決できる場合もあると聞いて、勧誘されたらどうしようと不安に思っていたのも吹き飛びました(笑い)」(明子さん)
 もっと詳しい話を聞きに行こうと、1カ月後に面談の予約をします。『おしえて!アトピー』を平成9年4月に読んで以来、ステロイドをスパッと断ったので、駿介くんの離脱は噴き出していました。顔はザクロみたいに真っ赤でブチブチ。かゆみもきつそうです。これまでなら、うろたえることしかできなかっただろう明子さんは、オムバスに行くことを決めてから気が楽になっています。「もう相談できる」、この安心感に包まれて、離脱中の駿介くんにも余裕を持って接していられたのです。
 5月、気候も良くなり、離脱の赤みもだいぶ退いて、「もうすぐオムバス」と、初夏の町を歩く晴れやかな親子3人でしたが、はた目には「真っ赤な赤ちゃん」に映ったよう。「その顔、どうしはったん?」、見ず知らずの人が覗き込みます。「湿疹だらけにして何してんの」。悪気はないであろう他人の言葉がグサグサ刺さります。

頼もしさフル回転のパパに
感謝して「食っちゃ寝」


 平成9年5月24日、待望の初面談で日本オムバス大阪を訪ねた廣江さんご一家。
「山田隆先生が、『親御さんが、子どもに薬を塗ってしまったことで自分を責めてはいけませんよ』とおっしゃったんです。『それ以前に、健康な体に産んであげられなくてと、お母さんがそれを責める必要もない』と。その言葉に救われました」(明子さん)。湯治開始を決意します。
「離脱のピークを一度越えた状態でした。でも、この先離乳食が入ってきてまた症状が出るのは必至。お母さんが、駿介さんの食事を怖がらないようにしないといけないと思いました」(林哲弘カウンセラー/現・九州ホスメックリカバリーセンター)
 おすわりもまだできない生後半年の赤ちゃんですから、お母さんに抱っこされての湯治です。50%の温泉で1回5分を日に3回から始めます。
「嫌がらずに入ってくれるんですが、すぐ寝てしまうんです。寝たら上げてと言われていたのですが……」
「眠るのは、それが苦痛じゃないからなんです。寝ると、ここぞとばかりに長く入れる親御さんがいて、それが怖いんですよ。廣江さんは、時間内に上げていらしたから問題ありません。入れ過ぎから体重を落とすと、治す体力もなくなります」(林カウンセラー)
 9日目で温泉を始めてから初の離脱、薬を断ってからは2度目の離脱がやってきました。細かいプツプツがびっしり覆う顔は真っ赤にむくみ出します。日に日に促進されるようで、その後1カ月でピーク。全身から体液が滲み出し、抱っこする大人の手も腕もベタベタにしていきます。
「かわいそうに臭いんですよ。湯治していると蒸気で匂いがムワ〜ッと上がってきて」(明子さん)、「臭かったなぁ」(郁男さん・明子さん)
 1カ月で湯治時間は1回15分に延びました。たとえ1回の湯治時間が短くても、急に生活の中にお風呂の回数が増えるわけですから、いつも湯治に追われる感覚です。
「朝からお風呂で、次にご飯作って食べさせて、寝かせて起こして湯治して、またご飯で……の繰り返しでした。夕方6時頃になると眠そうなので寝かせるんですが、かゆがって寝付くまでに2時間かかります。主人が帰ってくるまでに夕食の支度もできません」
「帰宅するとちょうど寝かしつけているんで、そーっと家に入って、主婦(夫)の時間の始まりです(笑い)。まず台所を片づけて、冷蔵庫にあるもので献立を考えて、作って。うち、犬も飼っているんで、それから散歩に連れてって、帰ってお風呂に入って一息。その後にお風呂洗ってお湯を交換する日もある。遅くに寝て、朝は6時に『行ってきまーす』です」(郁男さん)
「散歩に行ってはる間に冷蔵庫を覗くと、私の分の食事がラップされて入っているんです。ありがたくいただいていました」(明子さん)
 とてつもないご苦労です。それを駿介くんの離脱中2カ月間、いつも笑顔でテキパキと郁男さんはこなしています。「苦痛を感じませんでしたか?」の記者の愚問に、
「大人は放っとかれても生きていける。子どもはフォローしたらんと生きていけへん。家内には、おまえの持っているもの、せなアカンことは全部駿介に回せ。俺はおまえをフォローすると伝えていたんです」と、郁男さんの頼もしいお答え。「感謝して、食っちゃ寝の毎日でした(笑い)」(明子さん)

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