大分きれいになった。掻いた爪の跡は残っているが、ほとんど傷にはなっていない。背中や肩の辺りはかゆみも強く、後々まで炎症が出たり退いたりをくり返した。
 
「治るといいですね」
学校の先生方も応援


 赤ちゃんのときから薬に依存してきたせいでしょうか。慶彦くんはすでに、アトピー以外にもさまざまな体の不調を来していました。
「自律神経失調っていうか、ヘンでしたよね。暑いのにストーブの前から離れなかったり、暑くもないのに扇風機の前にへばりついてたり」(英子さん)
 慶彦くんの体の深部で、機能不全が進んでいることは明らかでした。これ以上、薬に頼った生活を続けさせるわけにはいきません。勉強よりも何よりも、健康を取り戻すことが第一。英子さんは学校にオムバスの本を持参して、担任の先生や校長先生に事情を話しました。
「1学期の間は遅刻したり休ませることもあるかもしれませんってお話ししたら、『病気ということですし、しょうがないですよね』って。オムバスの本も読んでいただいたんですけど、『こういう治療法もあるんですか。治るといいですね』って、すごくよく理解してくださったんです。健康診断で裸になれないこととか、体操着も一人だけ長袖のシャツにしたり、いろいろ配慮していただきました」
 一晩中かゆみと闘っている慶彦くんが、疲れ果てて眠りにつくのは明け方。少しでも体を休ませるため、朝は睡眠の確保が優先です。
 起床は午前11時。遅い朝食を食べ、遅刻して学校へ。みんなと同じ給食を食べて午後の授業を受け、4時過ぎに帰宅。それから1度目の湯治が始まります。

こんな風呂
ぶっ壊してやる!


「服を脱いだら皮膚がパラパラ、精神的にもすごいイライラでしょう? 『ぶっ壊してやる!』『こんな風呂壊れちまぇ!』なんて叫びながら入ってましたけど、隣が遠いので、泣こうがわめこうが聞こえないから助かりました(笑い)」
 そう証言するお母さんの横で、慶彦くん自身は「あんまり覚えてない」とニヤリ。実際、井上家の湯治は大変賑やかなものだったようです。
 1日も早く治してあげたい、そのためにはしっかり湯治してほしいと願うお母さん。一方、お風呂がイヤでイヤでたまらない慶彦くん。もともと賑やかな井上家に、「早く入りなさーい!」「うるせーっ!」の声が鳴り響きます。
「温まるとかゆくなるし、入ってるときはそうでもないけど、出た後がまたかゆいから……。一気に2時間近く入ってることもあった」(慶彦くん)
 薄くなった皮膚が、お風呂上がりにはさらに熱を持って突っ張り、たまらないかゆみが。その苦痛を思うと、目標の2時間を1度に入ってしまいたい気持ちは分かります。でも、従来の温泉湯治と同様、何回かに分けて入るのには理由があるのです。報告書を見たカウンセラーから電話が入り、帰宅後と就寝前に1時間ずつ、2回に分けて入ることになりました。


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