剥けた肌が少しずつ再生してきた。顔はジュクジュクしているが、背中はカサカサに変ってきた。全体的に体液の滲出が治まってきた。腕・手の甲・足の皮膚はめくれたままだ。

頬のかき傷がほとんどなくなり、手の甲・足首の肌も、かさぶたから徐々に再生し始めた。足の親指が切れて血が出ているが、これまで足首に走っていた深い皺は消えている。

さすが、きょうだい
絆の深さに感激


 湯治を始めて4カ月たっても、湿疹は全身をくまなく覆っています。お腹と膝は象の肌のように深い皺が何本も横切っています。背中から、足の甲から、腕から、一体かゆみがどこから生じているのかが分からないほどに、明沙ちゃんは体中を掻きむしっています。目を離すと血が吹き出るほど掻くのでした。

 夏休みに突入していたお兄ちゃんたちは、そんな明沙ちゃんの「掻き役」になってくれました。お母さんが家事をしている間、海人くんが、あるいは麻伽ちゃんが、順番で優しく明沙ちゃんを掻いてあげています。

「見た目の状態を汚いとか一切口に出さずに、普通に接して遊んで、楽しそうにしている3人の姿を見ていると救われた気持ちでした。きょうだいの存在は本当に大きかったと思います。上の子たちもまだ小学校の低学年で、夏休みですからどこかに連れていってほしかったに違いありませんが、文句一つ言わずにいてくれました」

 大切な妹が辛い思いをしていることをお兄ちゃんもお姉ちゃんもしっかり理解していたのです。『ふたりで協力して明ちゃんを助けよう』、親御さんの知らないところでそんな会話がなされていたのかもしれません。

 そのように昼間は比較的楽しく時間が過ごせていたのですが、夜は明沙ちゃんにとって逆に悲しい時間でした。夜中、眠れないため、気持がかゆみに集中してしまうのです。睡眠時間が2時間もない日々が続きましたが、それは由起子さんにとっても同じことでした。

 体力的、精神的にピークが訪れたのは8月の終わり頃。一向に調子の上がっていかない肌と延々続くかゆみ、慢性の睡眠不足に、ほとほと疲れきってしまったのです。

「もう…できない。どうしてやることもできない。玉城さん…私…限界です。やめて…しまいたい」。鳴咽に言葉を詰まらせながら、涙に濡れた手で由起子さんは受話器を握っていました。

「明沙ちゃんはお母さんと一緒に温泉という大船にもう乗っているのですよ。頑張りましょう。明沙ちゃんを頑張って救ってあげましょう」。玉城カウンセラーの一言ひとことが由起子さんの心に泌み入ります。

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