湯治開始から3カ月。かゆみはまだ強いが、離脱は山場を越えつつある。浸出液の量が減り、表面のパリパリ感も和らいできた。1時間ぐらいなら続けて眠れるようになった。

体を温め休ませて
ひたすら耐えた離脱


 100%の温泉で湯治をスタートしたのは97年2月22日。これからはアトピーを治すのが仕事です。当初、担当カウンセラーが掲げた目標は1日3回、30分ずつの湯治。すでに離脱が噴き出し、体力が底を打っていた関口さんにとっては、30分間の半身浴でも大変な負担がかかるのです。
「皮膚呼吸が全然できない状態でしたし、力任せに長時間入って倒れたりすると危険ですから。1時間入るのは無理だと思いましたので、もう少し体力が戻ってから時間を延ばしましょうとお話ししました」(奥田滋カウンセラー)
 アトピーが皮膚表面の病気ではないように、離脱も肌の上だけで起こっているのではありません。本来なら連動して働くはずの内分泌系や自律神経の働き、免疫システムなどの歯車が噛み合わなくなっているのです。
 そのため、肌のかゆみ、痛みにとどまらず、激しい虚脱感や不眠などの不快な症状が、束になって襲いかかります。それを温泉で何度も温め、体をとことん休ませて、本来の機能バランスが戻るのを、忍耐強く待つしかありません。
「離脱中は、風呂に入る以外は布団に横になってるのがやっとでした。痛くて寝返りも打てないし、手もうまく動かせないから、ご飯もボロボロこぼしてました。おじいちゃんみたいな食べ方(笑い)」

開始から2カ月で
離脱の峠を越えた


 ご家族は、ご両親とおじいちゃん、おばあちゃん。大事な一人息子ではありますが、湯治中の温泉交換はすべて関口さんが。 「親から、『あんたの仕事でしょ』みたいに言われて、確かに俺の仕事だよなって」  とはいえ、ただ見守るしかないご家族のつらさも、筆舌に尽くしがたいものだったはず。血と膿でドロドロの洗濯物を洗ってくれていたおばあちゃんは、心労のあまり、免疫力が低下したのでしょう。関口さんの離脱中、おばあちゃんが帯状疱疹に。一晩中、息子がかゆみにのたうつ音を階下で聞いていたお母さんも、急激にやせてしまったそうです。 「でも、ああしろ、こうしろなんて言わないで、全部任せてくれたのが良かった。あの状態のときにガーガー言われたら、ちょっとこたえたと思うんです。黙っててくれたし、『好きなようにやれ』って。それが助かりましたね」  とにかく、1日も早く、離脱が過ぎてほしい。何も言わないお父さんやおじいちゃんも、ご家族の気持ちは一つでした。その祈りが通じたかのように、関口さんの離脱は2カ月ほどで山を下り始めます。  97年のゴールデンウィークを過ぎる頃には、炎症が落ち着いて掻き傷も激減。温泉を8ケースから5ケースに減らし、湯治時間を延長していきます。


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