全身に症状が出て休職をしている頃。でもピークは越えている。「薬疹」らしき発疹は、強烈にかゆかった。下着が擦れてもかゆいので、一時は下着をつけないでいた。

「負けず嫌い」の
無茶を支えたものは


「睡眠時間なんて芸能人並みでしたもん。美容師の仕事はすごい好きだったんですけど、体が疲れてて、毎日が疲れてて、体調が悪いのは当たり前になっちゃってました」

 やすこさんが結婚したのは、そんな生活が6、7年続いたあと。夫となった満さんも結婚当初を回想して、「疲れてるのは見ててもわかりましたね」と。「もともと性格的に頑張り屋だから、仕事も家事も無理してやっちゃう。負けず嫌いなんですね」。

 それほど体が疲れていても無理が利いてしまうのは、若さと持ち前の根性、そして薬のおかげでしょう。本来なら不可能な生活を、薬に頼ることで可能にしてきたとはいえないでしょうか。
「いろんな薬を使ってきましたけど、皮膚科でもらったので覚えてるのはロコイドとかマイザー、ネリゾナ。あと、リンデロンは薬局で買ってました」

 作用の強いステロイド軟膏に加えて、鼻炎の治療にもステロイドの点鼻薬を。病名が何であったにしろ、ステロイドと二人三脚で歩いてきたことに間違いはありません。

 結婚後、やすこさんは美容師のキャリアを生かして某カツラメーカーに転職。水や薬剤を使う頻度は減っても、ステロイドに頼る生活は変わりませんでした。

溜まっていたつけが
噴き出してきた


「塗れば炎症は退くけど、次に出るときは前に塗った指のあと通りに出てくるんです。塗るたびに少し広く塗ることになるから、だんだん範囲が広がっていくわけですよ。体調も悪くなってきて、むくんだり、すごい冷え性だったり。みんなが汗かいてるのに一人だけ全然汗かかなかった。だから自分でも(副作用を)わかってたんですけど、お医者さんに言うと『違う』。ステロイドやめるって言うと怒るんですよ。『ステロイドをやめたら治らない』って」

 迷いながら薬を塗っていたやすこさんでしたが、ある朝起きると鏡の中に、「ボーンと腫れ上がった顔」が。別 の皮膚科に転院すると、今度は『ステロイドの副作用です』と断言されたのです。
「そのお医者さんは、『ステロイドを使わずに、この炎症を乗り越えましょう』って。それで、もう完全にやめようと思ったんです」

 ステロイドを断ち、解毒剤の注射を毎週1回。塗り薬はワセリンに替わりました。離脱は良くなったり悪くなったりをくり返しながら、時間をかけてじわじわと。そうして1年が経過した頃のやすこさんは、別 人のような顔になっていました。
「赤と白の境界がはっきりした、ヘンなまだら顔。怖くてお化粧なんかできないから、仕事の合間に顔を洗って冷やして……。常連のお客さんなのに、「初めての方ですね」なんて言われることが1日に3回もあったりして、すごい悲しくなっちゃったり、鏡に映ってる自分の顔とお客さんの顔を見たときには、ヤダなぁ、ヤダなぁって、すごいストレスでしたよね」


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