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ステロイドによるムーンフェイスでむくんでいる。背中・首・腕・肩、細かい湿疹が隈なく覆う状態。腋にはヘルペスが。頭皮からも滲出液が出ていた。 |
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京都にお住まいの瀧井洋子さんは、この取材を行なった、肌寒い4月初旬には、旧姓・桑原さんでいらっしゃいました。20代のほぼすべてをかけて、アトピーからの脱却に成功し、2週間後に控えた挙式をツヤツヤの肌で迎えられます。 病を退けるために、内向的な性格をどんどん強くしていかれた経緯、逃げ場のない状況から自力で抜け出した、長かった6年半の湯治生活を追っていきましょう。 引っ込み思案の優等生 いつもいい子を演じていた 乳幼児の頃からかぶれは頻繁。小学校低学年の記憶として、数ヵ月に1回の皮膚科通いで「学校に遅れていく気まずさ」があったという洋子さんは、医師からの「薬はなるべくたくさん、たっぷり塗りなさい」の指示も鮮明に覚えています。鼻炎や結膜炎もあったため、抗アレルギー剤の内服もし、体用・頭用・顔用と決められた、リンデロン(合成副腎皮質ホルモン剤)をはじめとするステロイド剤を塗り分けて過ごす毎日でした。 「ずっと薬で症状を抑えていたので、昔の友達で私がアトピーだと知っている人は少ないはずです。中学までは、アトピーの症状が日常生活を邪魔することは多分なかったのですが、高校生になると、すぐにしんどくなって、人づきあいが辛くなり、外に長くいたくなくて。今から思えば、自律神経失調症の細かな症状が露呈していたのだと思います」 進路上の悩みや、それまでにもずっとあった家庭内のゴタゴタが激化し、急速に自身が引っ込み思案になる感覚を覚えていった洋子さん。実は、ご両親の不和がもたらす空気が、桑原家には蔓延していたのです。家の中では二人の顔色を窺いながら、それぞれにいい顔をすることが、幼い頃から義務として染み込んでいました。学校での成績は飛びぬけて良く、それもご両親に向けての"いい子"のアピール。幼い心を痛めながらとった自衛策は、親の顔色を見て過ごす子どもの処世術だったのでしょう。 「常に神経がピリピリしていました。外でも、人にいい印象を持たれるには何を言えばいいか、どうすべきかばかりを考えて、自分がどうしたいかを口にすることはなかったんです。ただの優等生として扱われるのがイヤで、そう見せないために"いい人"に徹していた高校時代。人づきあいが表面的でしかないのも自覚していて、精神的な苦痛にどんどん入り込んでいった時期でした」 ふるまいも見た目も言動も人目優先だった洋子さん、ストレスがアトピーに関与するとは思ってもいない頃だったそうで、悪化する症状には「たっぷりのステロイド」をもって対処していました。 凄惨な離脱が仲介? いざというときだけ 家族が結束する不思議 22歳。社会人になっていた洋子さんの耳にステロイドのよからぬ噂が入ってくるようになりました。 「普通に生活していても、情報はどこからともなく入ってくるもので、ステロイドはやめたほうがいいだろうという気になりました。それまでにも鼻炎で通っていた耳鼻科で、腕の毛深さを指摘されて、もともとの体質と思い込んでいたものが、ステロイドの副作用だと教えられて愕然としたこともありました」 とりあえず薬を断ったものの、ケアの仕方も分からないままでは、ドッと噴き出した離脱になすすべもなく、病院へ逆戻り。ステロイドに代わる何かを見つけてからでないと薬は断てないと知って、馬油を試してみたり、民間療法でアトピーが治ったと書かれているいろいろな本を読んでみたり。 「その頃は仕事も休んで悶々としていました。父が図書館で『アトピー性皮膚炎の治し方が分かる本』(小川秀夫著/かんき出版)を借りてきたのですが、そういう本はずいぶん読んでいて、そのたびに悲しくなっていたので、読む気になれなかったんです。どんな方法にしろ、皆むちゃくちゃたいへんな思いをして治しているし、それが自分に合う方法と分かっていれば覚悟もできるけれど、もしかしたら合わへんかもしれないしって……」 とはいえ気になってチラチラとページをめくってみると、自身が体験してきた同じような記述に目が止まる箇所が多かったらしく、じわじわと「温泉はいいのかな」という気持ちに。運悪くなのか、ちょうどなのか、ヘルペスに感染し、とにかく何か打つ手が緊急に必要になってしまいます。耐えられないかゆみと無数の水泡が全身を包みました。もうオムバスに急ぐしかない。窮地でした。 「普段仲が悪いのに、母親は父と一緒に行動したい気持ちもあったようです。素直になれなかったんでしょうね。私のアトピーが悪化したことで二人は不思議とまとまり、即行動になりました」 それが平成5年11月末のこと。京都在住のご一家が向かった先は、神奈川県藤沢市の日本オムバスでした。 「たかが一泊分の旅行荷物が持てないぐらい力がなく、意識が朦朧としていました。そんな状態でも新幹線で他の人の視線だけは気になりました」 顔も頭も皮膚はドロドロ。ステロイドの副作用・ムーンフェイスで全身パンパンにむくんでいたのに、押せばしぼみそうに、弾力はなく感じられました。自分の肌が自分のものではない感覚。『この先どうなっていくんだろう』。体のことだけでなく、仕事のこと、将来のこと、考えても見当もつかないなかで、不安だけを繰り返す旅路でした。 |