受験勉強が本格化していた頃だが、我慢できないほどのかゆみは去り、「アトピーに逃げない」姿勢で自信を深めていった。良くなった感覚を大事にしていた。

受験勉強が本格化
お風呂場が勉強部屋


 進学し、高3に。このとき、安本さんは、アトピー治療をできるだけ優先した学校生活を送れるように先生に相談しています。治癒に向けた積極的な工夫です。

 学校のクラスは、習熟度別。カリキュラムが厳しすぎる今までのクラスを、一段階落とすことにして新学年をスタートさせました。また、家から学校が徒歩5分と近いこともあって、特例として、昼休みは自宅休息を許可してもらっています。
「先生が親身になって相談にのってくれたおかげで、生活しやすくなりました。昼に温泉水で体を拭いて、着替えたりするだけでうんと楽になれました。体育の後ならなおさらです」

 体の辛さも離脱のピークから比べるとかなり楽で、その上快適に過ごせる毎日。青年の顔に明るい表情が日に日に戻っていきました。

 そんなある日、安本さんは、横山カウンセラーが進行役をつとめた「高校生セミナー」に参加しました。
「同じ病気に悩んでいる同じ年代の集い。参加して、自分が恵まれていることに初めて気づき、反省することが多かったです」

 一人で悩むと、どんどんネガティブな感情に引き込まれていくものです。でも、考えてみれば、友達との摩擦はない、見えるところからは症状がかなり消えている、体もさほど辛くない、学校も近い……、感じるべき嬉しさとありがたみを、自分のプラスにしていかなきゃと目が覚めた、そんな経験をしたのです。

 さて、受験勉強に本格的に取り組む夏がやってきました。その頃になると、しっかり続けてきた湯治のおかげで、睡眠も深くなっていました。
「文系志望ですから、勉強は、本を読んで理解して覚えることが中心。これなら湯船に浸かりながら行うことが可能です。中間や期末試験の結果 は気にせず、授業も入試に必要ないものは大胆に切り捨てて、ひたすら本を読む。これが僕流の受験勉強でした」

 実はその頃、志望校について安本さんは悩んでいました。行きたかったのは関西圏以外の大学。でも、まだ治りきっていない体が前提です。これまで続けてきた湯治を一人暮しで続けていくことが、現実的に考えて可能かどうか、いざ一人で取り組み出してからまた体調が落ち込む不安……、冷静に判断して、自宅から通 学できる公立大に照準を合わせることにしたのです。


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